脳卒中の応用知識
About Stroke

C-08.カテーテルによる脳血管閉塞術

どのような疾患が適応になるか

  • 大型・巨大脳動脈瘤
  • 解離性・紡錘状・細菌性動脈瘤
  • 外傷や治療による血管損傷
  • 内頚動脈海面静脈洞瘻
  • 血管を巻き込んだ脳腫瘍
  • その他

カテーテルによる血管閉塞の方法

治療は血管造影装置のある特別な手術室で行います。

麻酔の方法(全身麻酔or局所麻酔)は塞栓する血管によって選択されます。足の付け根からカテーテルを血管内に挿入し、レントゲンと造影剤を使って透視しながらカテーテルを閉塞する血管の近くまで進めます。ここで金属製コイルを主に用いて血管を閉塞します。閉塞後は目的血管の閉塞と閉塞血管より先の脳血流が確保されていることを、非閉塞血管から撮影して確認します。その後カテーテルを抜去し、穿刺部を止血して、麻酔を覚まして専用病棟へ帰室します。

脳血流の変化を頭に順応するために、通常3日ほどかけて徐々に普通の生活に戻るようにします。

カテーテルによる血管閉塞の危険性

  • 閉塞後の血流不足
    閉塞試験は短時間の閉塞であり、永続的な閉塞では血流が不足し血管閉塞後に脳梗塞を発症することがあります。(2%程度)
  • 治療中の脳梗塞や脳出血
    閉塞途中での血栓が形成されることによる脳梗塞の可能性があります。このような合併症を予防するために、治療中は血液を固まりにくくする薬剤や、状況によりバルーン付きカテーテルによる血流遮断を用いて最大限の工夫を行います。
  • 脳梗塞になった部位が原因での脳出血や手術中の抗凝固剤使用による脳出血の可能性があります。(きわめて稀)
  • カテーテル操作に伴う血管解離
    カテーテル操作に関連し、頭頚部の血管の内側に亀裂が入り、血管の狭窄や閉塞が起こることがあります。その修復のためにステントという金属製の筒を留置することがあります。(きわめて稀)
  • カテーテルの抜去困難や離断による体内への遺残(きわめて稀)
    体内留置機器以外のものは治療終了時に回収しますが、稀に離断等により体内に遺残することがあります。
  • レントゲン(放射線)による障害(重篤なものは稀)
    治療時間が通常より長くなると、放射線により一時的な脱毛や皮膚障害がおきることがあります。また白内障や発がんの可能性も報告されています。放射線被ばくが多かった場合には、外来で経過を診ます。
  • 穿刺部の内出血や感染(外科処置が必要なものは稀、軽度の皮下出血はよく起こる)
    太いカテーテルを使用し、血液を固まらなくする薬剤を使用するため、穿刺部の止血は検査の時より困難です。そのため特殊な機器を使用し止血をしますが、稀に内出血や感染を起こすことがあります。その場合は輸血をしたり、外科的に修復することがあります。
  • 薬剤・造影剤・塞栓物質・カテーテル素材によるアレルギー・肝機能・腎機能の低下
    急性腎不全では透析が必要になることがあります。またカテーテル素材に対する遅発性アレルギー反応が報告されています。(透析の導入は、慢性腎不全がなければきわめて稀)
  • 大動脈のプラークの破綻によるコレステロール塞栓症および血管閉塞(きわめて稀)
    動脈硬化がきわめて強く大動脈に大きなプラークがある場合、そこからコレステロールが腎臓・腸管・下肢に飛散し、虚血性合併症を起こすことがあります。
  • その他予期せぬ合併症

合併症は、一時的な手足の軽度の麻痺のように軽症なものから、永続的な強い麻痺、言語障害のように仕事や生活に支障がでる重症なもの、または植物状態や死亡という最重症なものまであります。

今回の治療で、症状を伴うような合併症が発生する可能性は、5%程度と考えます。合併症は予防するよう最大限努力し、もし発生した場合、最前の治療を尽くすことを約束します。

(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 佐藤 允之)