脳卒中の応用知識
About Stroke

C-04.未破裂脳動脈瘤とは?

未破裂脳動脈瘤とはどんな病気か?

脳動脈瘤とは、脳の血管にできる小さなこぶ状のふくらみで、くも膜下出血を起こすことがあります。

脳ドックでは小さな疑い例も含めると、3%程度の方に発見され、稀なものではありません。脳動脈瘤発生の原因は明らかではありませんが、中年以降の女性に多く、家族にもみつかることがあります。

未破裂脳動脈瘤
図1:未破裂脳動脈瘤

くも膜下出血とはどんな病気か?

 

突然の激烈な頭痛で発症します。通常前兆は無く、嘔吐や意識障害を伴うこともあります。まれに軽微な頭痛や、眼の症状(ものが2つに見える、片方のまぶたが下がる、ひどい充血など)が先行することがあります。

くも膜下出血は現在でも重篤な病気で、1/3は回復しますが、1/3は死亡、1/3は後遺症を残します。

破裂の可能性はどれくらいか?

脳動脈瘤を指摘されると、だれでも「破裂するのではないか?」と心配になり強い不安を感じますが、通常脳ドックや検査で偶然発見された症状のない小さな動脈瘤がすぐ破裂することはきわめて稀で、過度に心配する必要はありません。

発見された未破裂脳動脈瘤が破裂するのかどうか、またその時期を確実に予測することは困難ですが、大きさ、部位、家族歴、既往歴などで今後の破裂率を推測することはできます。

以下に破裂率を予測するスコアを示します。大きさと場所がもっとも破裂率に関係することがわかります。

  • UCAS Score
  • Phasesリスクスコア

まずはどうすればよいか?

喫煙はくも膜下出血の危険性を高めるため、直ちに禁煙すべきです。また高血圧と過度の習慣的な飲酒も破裂の危険性を高める可能性があります。

また治療を検討する場合は、入院していただき脳血管造影を行い精査します。そして大きさや形を正確にみて、治療すべきかどうか、治療するならどのような方法が最適かを検討します。

どのような人に治療を勧めるか?

  • 強く治療を勧める
    くも膜下出血を起こした人
    大きさが10mm以上あるもの
    動脈瘤による症状がある人(まぶたが下がる、ものが2重に見える、飲み込めない、手足のマヒ、しびれなど)
    経過観察中に増大やかたちに変化があったもの
  • 原則的に治療を勧める
    大きさが5mm以上あるもの
  • 治療を検討する
    4mm以下でも破裂リスクがありそうなもの
    特定の部位(前交通動脈)
    不整なかたち
    若年者
    複数の動脈瘤
    ご家族にくも膜下出血のかたがいる場合(くも膜下出血の家族歴)
    動脈瘤による不安、心配が強い方

未破裂脳動脈瘤の治療法は?

  • 開頭クリッピング術
    脳動脈瘤の基部にクリップをかけ血流を遮断する方法です。再発が無く優れた方法ですが、開頭が必要です。脳表面のものや、血管内治療が難しい形のものに向きます。
  • 塞栓術(血管内治療)
    プラチナでできた柔軟なコイルなどを脳動脈瘤に留置し、血流を遮断する方法です。開頭が不要なため、深部にあっても脳や神経に影響が出る可能性が低い治療です。しかし治療後に再発する可能性があり、再治療が必要になることがあります。単純なかたちのものや、脳深部のものに向きます。
  • 血流改変ステント治療(血管内治療)
    目の細かいパイプ状のステントという機器を動脈瘤の入り口付近に留置し、動脈瘤の血流を停滞させ閉塞します。大型の動脈瘤でも再発が少ないことが報告されています。特定の部位の入り口が広い動脈瘤、大型の動脈瘤に向きます。
  • 母血管閉塞術(血管内治療または外科手術)
    動脈瘤を血管ごと閉塞する治療で、脳の圧迫症状のある巨大な動脈瘤や血管全体が病的なもの(解離性動脈瘤)に行います。脳血流を保つためにバイパス手術を併用することがあります。

どのような人には経過観察を勧めるか?

  • 4mm以下で上記のようなリスクがないもの
  • ご高齢の方
  • 脳の外にあり破裂してもくも膜下出血にならないもの
  • 治療の危険性が高いもの
  • 治療を希望しない方

どのような人には経過観察を勧めるか?

禁煙、高血圧と過度の飲酒の是正を勧めますが、それ以外の生活の制限は不要です。運動や旅行も今まで通りでかまいません。

また6ヶ月から1年ごとにMRIによる検査を勧めます。変化があった場合、破裂の危険性が高まったと考えるべきです。小さなものでも破裂することもあり、定期的な検査では破裂前の変化を確認できない場合もあります。

またある部位の動脈瘤は増大する際、頭痛、目の奥の痛み、まぶたの下垂、ものが二重にみえることがあります。また突然の強い頭痛は破裂の可能性があり、これらの症状があれば受診してください。

筑波大学附属病院脳卒中科での
未破裂脳動脈瘤治療について

一般的に未破裂脳動脈瘤の破裂は切迫していることは稀で、その治療には危険性があります。当科では学会で定めたガイドラインに則り、破裂のリスクと治療のリスクを勘案し、治療のメリットがある方にのみ治療をお勧めします。

先述したように脳動脈瘤には多くの治療法があり、当科では最新の方法も含めすべての治療が可能です。また多数の専門医・指導医が在籍しており、最新の設備と多くの経験を活かし、最適な治療を提供します。

血管内治療 開頭治療
2019年 未破裂脳動脈瘤 25 12
破裂脳動脈瘤 16 8

(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 松丸 祐司)