脳卒中の応用知識
About Stroke

C-01.くも膜下出血とは?

くも膜下出血はどんな病気?

脳表面の出血で、死亡することがある重篤な疾患です。

くも膜下出血は脳の表面の出血で、現在でも1/3の方は回復されますが、1/3は死亡、1/3は後遺障害を残してしまいます。くも膜下出血を起こすと、以下のようなことが続発し、急激に悪化することがあります。

  • 再出血
    再出血がおきると急激に悪化し、死亡することが多いです。
  • 脳血管攣縮
    血管が収縮して血流が低下し、脳梗塞を発症します。発症4日目から14日目くらいまで継続します。
  • 水頭症
    髄液を排出する手術が必要になることがあります。
  • その他の全身合併疾患
    心筋症による心不全、不整脈、肺水腫、肺炎などを併発することがあります。
くも膜下出血症例写真
くも膜下出血症例写真

くも膜下出血の症状は?

多くは、突然の今までに経験したことがない頭痛で発症し、嘔吐、失神、頸部痛(硬直)などを伴います。局所的な圧迫症状としては、目を動かす神経の障害(複視)や瞼が下がってくる(眼瞼下垂)を引き起こすこともあります。

くも膜下出血の影響で視力や視野への影響もあります(硝子体出血、網膜出血)。
腰部に沈殿した血液の影響で腰から背中に痛みを感じることもあります。

くも膜下出血の原因は?

脳動脈瘤の破裂が最も多いです。

  • 脳動脈瘤
  • 脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、もやもや病、脊髄血管疾患
  • 頭部外傷
  • 心疾患関連する細菌性動脈瘤
  • 原因不明
    中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血

くも膜下出血の検査

脳血管検査を行い、原因をみつけ、再出血予防を行います。

くも膜下出血の治療

血管内治療と開頭治療があります。

  • 開頭クリッピング術
    脳動脈瘤の基部にクリップをかけ血流を遮断する方法です。再発が無く優れた方法ですが、開頭が必要です。脳表面のものや、血管内治療が難しい形のものに向きます。
  • 塞栓術(血管内治療)
    ラチナでできた柔軟なコイルなどを脳動脈瘤に留置し、血流を遮断する方法です。開頭が不要なため、深部にあっても脳や神経に影響が出る可能性が低い治療です。しかし治療後に再発する可能性があり、再治療が必要になることがあります。単純なかたちのものや、脳深部のものに向きます。
  • 母血管閉塞術(血管内治療または外科手術)
    動脈瘤を血管ごと閉塞する治療で、脳の圧迫症状のある巨大な動脈瘤や血管全体が病的なもの(解離性動脈瘤)に行います。脳血流を保つためにバイパス手術を併用することがあります。

筑波大学附属病院脳卒中科での
脳動脈瘤治療について

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は、きわめて重篤な疾患です。

当科では未破裂脳動脈瘤の治療適応を慎重に検討します。また破裂脳動脈瘤では、早期に再破裂予防のための治療を行います。

脳動脈瘤の部位、形態、大きさ、全身状態や合併疾患を考慮し、適切なものを提案します。当科には、脳神経外科専門医6名、脳卒中の外科技術認定医・指導医2名、脳血管内治療専門医・指導医8名が在籍しており(2020年5月現在)、これまでの多くの治療経験と最新設備を用いて最適な治療を提供します。

血管内治療 開頭治療
2019年 未破裂脳動脈瘤 25 12
破裂脳動脈瘤 16 8

(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 佐藤 允之)