C-06.未破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング
開頭クリッピングとはどのような治療か
クリップによって脳動脈瘤内への血流を遮断します。
脳動脈瘤の再破裂による出血を予防することです。
破裂、未破裂にかかわらず最も確立した脳動脈瘤の治療法です。クリップはそのまま頭の中に残ったままになりますが、そのこと自体は特に問題になることはありません。
再破裂予防ですので、術前から認められている症状を改善させるものではありません。
開頭クリッピングの治療方法は?
治療は全身麻酔で行います。
皮膚を切開する部分のみ一部剃毛を行います。皮膚と側頭筋を切開して、頭蓋骨を切開して、開頭します。脳を覆っている硬膜を切開します。手術用顕微鏡で術野を拡大して手術を行います。脳の表面のくも膜という薄い膜を切って脳と脳の間をわけながら、脳動脈瘤まで到達します。脳動脈瘤周囲を確認して、正常血管と分離します。脳動脈瘤のネック部分にクリップを挿入して、脳動脈瘤内に血流が入らないようにします。脳動脈瘤内に血流が入り込まないことと正常血管が温存されていることを確認します。硬膜を縫合して、一度開頭した頭蓋骨を戻します。側頭筋、皮膚を縫合して手術は終了となります。
術中は正常脳血管の障害によって運動麻痺を生じないか運動神経モニターを行いながら手術を行います。
通常の手術時間は3時間から4時間程度です。入院期間は約10日間です。
開頭クリッピング手術の危険性
外科治療には合併症の危険性があります。
- 術中破裂
脳動脈瘤が手術中に破裂することがあります。 - 脳出血
術中、術後に出血をきたすことがあります。(重篤なものは稀) - 脳梗塞
術中の手技などで脳梗塞が起こる可能性があります。(2~3%程度) - 脳組織損傷
細心の注意を払いながら手術は行いますが、脳組織や脳血管を損傷する可能性があります。(重篤なものは稀) - けいれん
術後にけいれん発作を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - 髄液漏・髄膜炎
脳を保護する髄液という水分が皮下などに漏出することがあります。また細菌による感染症(髄膜炎)を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - 創部に関連するもの
一時的に頭皮の血流が悪くなり、創部が一部壊死したり、傷が開いたり、感染症を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - 薬剤に関連するもの
薬剤によるアレルギー・肝機能・腎機能の低下を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - その他予期せぬ合併症
これらによって入院期間が延長する可能性は5%程度あります。また、意識障害、運動(マヒ)、感覚(しびれ)、ことば、嚥下、嗄声、記憶、視力視野などの障害や後遺症を生じる可能性が1~2%、死亡する可能性は1%未満です。
筑波大学附属病院脳卒中科での
脳動脈瘤に対するコイル塞栓術について
当科では脳動脈瘤に対し血管内治療を積極的に取り入れています。
また当科には日本脳神経血管内治療学会の認定する専門医が4名、指導医が4名と県内で最も多く在籍し(2020年5月現在)、同学会の研修施設に認定されています。これまでの多くの治療経験と最新設備を用いて最適な治療を提供します。
血管内治療 | 開頭治療 | ||
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2019年 | 未破裂脳動脈瘤 | 25 | 12 |
破裂脳動脈瘤 | 16 | 8 |
(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 伊藤 嘉朗)