
日本では脳卒中の患者さまへの治療は脳神経外科医の担当であることが行うことが一般的です。しかし、外科的治療の有無に関わらず内科的治療も脳卒中に対しては有効であり、事実、海外では血圧コントロールをはじめとして神経内科医が主治医を務めるケースが一般的です。
一方でここ数年、カテーテル技術の急速な進歩により、脳血管内治療が広く行われるようになってきました。こうした状況のもと、外科・内科の垣根を取り払い、レジデントも含め、脳神経外科・神経内科・救急診療部による混成チームであらゆる脳卒中の患者さまにベストの治療を行うべく、フロンティアとしての使命感のもとで発足したのが「筑波大学附属病院脳卒中科」です。
これにより、超急性期における対応はもとより、予防・術後も含めたあらゆる段階において脳卒中の患者さまに最適の治療を行うことが可能になりました。大学病院ならではの高度で先進的な脳卒中治療をより多くの患者さまに提供して参りたいと考えています。
筑波大学の立地する茨城県は、強い塩味が好まれる食文化の関係からか高血圧の患者さまが多く、また、医療施設が少ないことに加えて広大な県であるために病院への交通アクセスが良好とは言いがたいことなどもあり、死因構成に占める脳卒中の割合が非常に高くなっています。
筑波大学を母校とする者として、私はこの事実を大変残念に受け止めておりました。そこで虎の門病院脳卒中センター脳神経血管内治療科部長を経て出身校である筑波大学に戻るに際し、これまで培ってきた知見を地域の皆様のお役に立てたいとの想いで、「筑波大学附属病院脳卒中科」の発足を決意いたしました。
幸い地域の皆様の関心は高く、治療実績も順調に伸びています。その成果をより確かなものとする上でも、今後入職される皆さんには大きな期待を寄せております。
特に神経内科医の医師にとっては脳出血、くも膜下出血の患者さまを担当できる機会はこれまでなかったと思いますが、脳卒中科では、内科医・外科医とも脳血管内治療を担当することから、神経内科医であっても脳出血、くも膜下出血の治療に携わることができます。
そうした体験を通じてカテーテル治療という新たな技術を習得することは、医師としてのポテンシャルを一気に高めることにつながるでしょう。
ぜひ、脳卒中に関心を持つあらゆる人材に、「筑波大学附属病院脳卒中科」のドアを叩いていただきたいと考えています。