B-02.脳出血の手術
脳出血はどのような治療ですか?
脳出血に対しての外科治療の目的は
- 救命
- 症状の緩和及び早期回復の促進
になります。
出血が多い場合には命の危険がありますので、出血を取り除くことで、命の危険性を回避します。また出血を取り除くことで症状の緩和が期待できたり、早期の回復につなげられる場合には手術を行うことがあります。
出血によって破壊された脳組織は再生されませんので、脳には傷跡が残る形になります。
どのような人に治療が必要ですか?
出血量が多い下記の部位の脳出血です。
- 被殻出血
- 小脳出血
- 皮質下出血
- 脳室内出血
治療方法
- 開頭血腫除去術
主には救命目的です。
開頭を行って頭蓋内の出血を除去します。出血部位を広くカバーするように大きく皮膚を切開し、頭蓋骨を切ります。開頭した後、脳を覆っている硬膜を切開します。脳の一部を切開して血腫を除去していきます。脳腫脹が高度の場合には人工硬膜を用いて硬膜を形成して、頭蓋骨をもとに戻さないで手術を終了することがあります。その場合は、後日頭蓋骨形成術を行います。 - 穿頭脳室ドレナージ術
水頭症に対する治療です。
出血成分によって脳脊髄液の還流が障害されて水頭症をきたすことがあります。その場合は水頭症に対する治療が必要になります。頭蓋骨に小さな穴をあけてチューブを挿入して脳脊髄液をドレナージする方法です。 - 内視鏡下血腫除去術
主に症状緩解目的です。
全身麻酔で行います。脳出血近傍の皮膚を切開して、小さく開頭を行います。脳の一部を切開して内視鏡を挿入するための管を留置します。血腫を確認して内視鏡を用いて血腫の除去を行います。出血をきたした場合には止血を行います。止血を確認します。皮膚を縫合して手術は終了となります。
脳出血の手術の危険性
- 再出血
術中、術後に出血をきたすことがあります。(5%程度) - 脳梗塞
出血周囲の脳血管の血流障害が生じることがあります。(2~3%程度) - 脳組織損傷
細心の注意を払いながら手術は行いますが、脳組織や脳血管を損傷する可能性があります。(重篤なものは稀) - けいれん
術後にけいれん発作を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - 髄液漏・髄膜炎
脳を保護する髄液という水分が皮下などに漏出することがあります。また細菌による感染症(髄膜炎)を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - 創部に関連するもの
一時的に頭皮の血流が悪くなり、創部が一部壊死したり、傷が開いたり、感染症を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - 薬剤に関連するもの
薬剤によるアレルギー・肝機能・腎機能の低下を起こすことがあります。(重篤なものは稀) - その他予期せぬ合併症
筑波大学附属病院脳卒中科での
脳出血の治療
脳出血と診断されたらまずは血圧を下げます。頭痛や嘔吐に対しては適宜鎮痛薬や制吐剤を使用します。また、脳出血後には脳浮腫が進行して症状の悪化が見られることがありますので、脳浮腫治療を行います。脳出血の原因となる疾患がある場合にはそれに対する治療を行います。
出血の部位によっては救命や症状の早期回復を目的として手術を行うことがあります。
手術方法は、開頭手術、内視鏡手術、穿頭手術があります。出血部位、出血量、状態によって手術方法を選択します。
脳出血例 | うち手術症例 | |
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2019年 | 79 | 24 |
(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 伊藤 嘉朗)