脳卒中の応用知識
About Stroke

B-01.脳出血とは?

脳出血はどんな病気?

脳の内部に出血する重篤な疾患です。

脳出血は脳血管の破綻によって脳組織内に出血する疾患です。
脳の被殻(ひかく)、視床(視床)、小脳、橋(きょう)という部位に好発します。
出血により脳は破壊され、いろいろな症状を呈します。
出血成分はいずれ吸収されますが、残念ながら障害された脳組織は完全には修復されません。

被殻出血
視床出血
橋出血
小脳出血

脳出血の症状は?

出血した部位や出血量によって多様です。

軽症例では、頭痛、嘔吐、めまい、しびれ、軽度の脱力ですが、重症例では、マヒ、ことばの障害、意識障害、呼吸の障害などを呈します。一般的に発症後1週間は、出血の周囲の脳がむくみ(脳浮腫)、症状が徐々に悪化します。また再出血が起きると急速に悪化し、意識障害や死亡に至ることがあります。

脳出血の原因は?

多くは高血圧ですが、若年者ではその他の原因があります。

原因の多くは高血圧症によるものです。未治療の高血圧が長く続くと、脳の穿通枝と呼ばれる細い血管にストレスがかかり、血管が変成し出血してしまいます。ご高齢の方はアミロイドアンギオパチーという、老廃物の蓄積によることがあります。

高血圧のない方や若年者では、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、もやもや病、海綿状血管奇形、脳腫瘍などが原因となることがあり、精査が必要です。

脳出血の治療は?

入院後の再出血は症状を悪化させるため、その予防のために血圧を厳重に管理します。
また発症後1週間程度は、出血の周囲の脳の浮腫が徐々に進行するため、抗浮腫薬を投与します。

これらの治療でも意識障害が進行する場合は、救命を目的に血腫の除去手術を検討します。また脳動静脈奇形など原因となる血管疾患がある場合、それに対する治療を行います。

予後は?

出血した部位や出血量によって多様です。

脳出血によって破壊されてしまった脳組織は完全に修復することはなく、しばしば後遺障害を残してしまいます。

意識障害を伴わない軽症例や中等症例では、リハビリによる回復が期待できます。
意識障害を伴うような重症例では、小脳出血を除き、意識障害の遷延や高度の機能障害の可能性が高く、特に言語の中枢がある左脳(優位半球)の出血や脳幹部の出血は、右脳の出血より機能に関する予後は悪くなってしまいます。しかし若年者ではリハビリにより劇的に回復する例もあります。

筑波大学附属病院脳卒中科での
脳出血の治療

脳出血と診断されたらまずは血圧を下げます。
頭痛や嘔吐に対しては適宜鎮痛薬や制吐剤を使用します。また脳出血後には脳浮腫が進行して症状の悪化が見られることがありますので、脳浮腫治療を行います。脳出血の原因となる疾患がある場合にはそれに対する治療を行います。

出血の部位によっては救命や症状の早期回復を目的として手術を行うことがあります。
手術方法は、開頭手術、内視鏡手術、穿頭手術があります。出血部位、出血量、状態によって手術方法を選択します。

脳出血例 うち手術症例
2019年 79 24

(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 伊藤 嘉朗)