脳卒中の応用知識
About Stroke

E-01.脳・脊髄血管造影検査

血管造影検査とは

血管疾患の最も重要な検査です。

しかしCTやMRIでは微細な病変を断定できなかったり、安全な手術や血管内治療に必要な微細な構造が明らかにならないことがあります。そのような場合、入院によるカテーテルを使った血管造影検査が必要です。

図1:脳血管造影

図2:脊髄血管造影

適応となる疾患

  • 脳梗塞の原因となる血管狭窄・血管閉塞
  • 脳動脈瘤
  • くも膜下出血・脳出血
  • 脳動静脈奇形
  • 硬膜動静脈瘻
  • もやもや病
  • 脳腫瘍
  • 静脈洞血栓症
  • その他CTやMRIで確定できない脳・脊髄血管疾患

血管造影検査の方法は?

カテーテルから塞栓物質を注入し、腫瘍血管を閉塞します。

通常前日に入院していただきます。

脳血管造影は局所麻酔で、脊髄血管造影は全身麻酔で行います。足の付け根、手首、肘、親指の付け根などから針を使ってカテーテルを血管内に挿入し、X線透視下に目的とする血管に誘導します。そこから造影剤を注入し、いろいろな方向から撮影します。このとき、顔面や頚が熱くなったり、眼前に閃光が見えたりすることがありますが、心配はありません。

検査後は、手首からの場合2時間程度、足からの場合4~6時間程度の安静が必要で、翌日に退院となります。

血管造影検査の危険性

  • 脳梗塞
    カテーテル操作で血管損傷や血栓が生じ、脳梗塞を起こす可能性があります。
  • カテーテル操作に伴う血管解離
    カテーテル操作に関連し、頭頚部の血管の内側に亀裂が入り、血管の狭窄や閉塞が起こることがあります。
  • レントゲン(放射線)による障害
    治療時間が通常より長くなると、放射線により一時的な脱毛や皮膚障害がおきることがあります。また白内障や発がんの可能性も報告されています。
  • 穿刺部の内出血や感染
    穿刺部に内出血や感染を起こすことがあります。
  • 造影剤によるアレルギー・腎機能の低下
    じんま疹、吐き気、喘息、ショックを起こすことがあります。アレルギーは数時間後におきることもあります。予定以上に使用した場合、腎臓の機能を悪化させることがあります。造影剤によるけいれん発作などを起こすことがあります。
  • 大動脈のプラークの破綻によるコレステロール塞栓症および血管閉塞
    動脈硬化がきわめて強く大動脈に大きなプラークがある場合、そこからコレステロールが腎臓・腸管・下肢に飛散し、虚血性合併症を起こすことがあります。(きわめて稀)
  • 脳動脈瘤の破裂(きわめて稀)
  • その他予期せぬ合併症

これらにより入院期間が延長する可能性が0.3%程度にあります。また、意識、運動(マヒ)、感覚(しびれ)、ことば、記憶、視力視野などの障害や後遺症を生じる可能性が0.2%、また死亡する可能性もわずかにあります(当院では経験がありません)。

筑波大学附属病院脳卒中科での
脳・脊髄血管造影検査

脳血管造影は、わずかに危険性のある検査ですが、治療方針の決定や安全な治療のために必要な方に施行させていただきます。脊髄血管造影は、高度な技術と読影力が必要ですが、筑波大学では全身麻酔下に行うことにより、苦痛の軽減と高画質撮影を可能としました。

脳血管造影 脊髄血管造影
2019年 202 6

(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 佐藤 允之)