E-02.脳血管の閉塞試験
閉塞試験とはどんな試験か
治療のための血管閉塞が可能かどうかを検討します。
治療のために脳血管を永久に閉塞させることが可能かどうか、一時的に血管を閉塞し、脳血流を確認する検査です。
脳血管は4本あり、多くの人はそのうちの1本を閉塞しても脳梗塞になりません。しかし血管の間に連絡が十分無い場合は脳血流が不足し、永久閉塞では脳梗塞を生じます。脳血管造影に引き続き行います。
方法は、閉塞予定の血管を、風船がついたカテーテルで閉塞し、造影剤を用いて脳血流を確認します。局所麻酔で施行する場合は、症状の出現を確認します。
どのような疾患が対象になるか
- 脳動脈瘤
- 外傷や外科・血管内治療による血管損傷
- 内頚動脈海面静脈洞瘻
- 血管を巻き込んだ脳腫瘍
- その他
閉塞試験の危険性
- 脳梗塞
一時閉塞することで血栓が形成されることによる脳梗塞の可能性があります。またカテーテル操作で血管損傷や血栓が生じ、脳梗塞を起こす可能性があります。 - カテーテル操作に伴う血管解離
カテーテル操作に関連し、頭頚部の血管の内側に亀裂が入り、血管の狭窄や閉塞が起こることがあります。 - レントゲン(放射線)による障害
治療時間が通常より長くなると、放射線により一時的な脱毛や皮膚障害がおきることがあります。また白内障や発がんの可能性も報告されています。 - 穿刺部の内出血や感染
穿刺部に内出血や感染を起こすことがあります。 - 造影剤によるアレルギー・腎機能の低下
じんま疹、吐き気、喘息、ショックを起こすことがあります。アレルギーは数時間後におきることもあります。予定以上に使用した場合、腎臓の機能を悪化させることがあります。造影剤によるけいれん発作などを起こすことがあります。 - 大動脈のプラークの破綻によるコレステロール塞栓症および血管閉塞
動脈硬化がきわめて強く大動脈に大きなプラークがある場合、そこからコレステロールが腎臓・腸管・下肢に飛散し、虚血性合併症を起こすことがあります。(きわめて稀) - 脳動脈瘤の破裂(きわめて稀)
- その他予期せぬ合併症
これらにより、通常の脳血管造影検査では入院期間が延長する可能性が0.3%程度にあります。バルーン閉塞試験では通常の血管造影よりも危険性が高くなり、意識、運動(マヒ)、感覚(しびれ)、ことば、記憶、視力視野などの障害や後遺症を生じる可能性が1~2%、死亡する可能性もあります(当院では経験がありません)。
(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 佐藤 允之)