A-02.頚部頚動脈狭窄症
頚部頚動脈狭窄症とはどんな病気?
脳梗塞の原因です。
頚動脈は脳に血液を送る最も重要な血管です。
頚動脈は頚部で脳への血管(内頚動脈)と顔面への血管(外頚動脈)にわかれますが、その分岐部は動脈硬化によるプラークの好発部位です。プラークは動脈壁内のコレステロールなどの沈着で、血管壁を肥厚させるので血管を狭くし、進行すると脳への血流が減少します。
また時にプラークは破綻し、内容物が脳へ飛散したり血栓(血の塊)が形成され血管を閉塞することがあります。これらにより脳梗塞を起こします。
頚動脈狭窄症の原因は?
多くは動脈硬化です。
動脈硬化症が原因で、高齢の方に多く発症します。また喫煙、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高血圧の方に多く発症します。動脈硬化症は全身の血管で進行するので、頚動脈狭窄症のある方は、心臓の冠動脈、腎動脈、下肢血管にも狭窄や閉塞がしばしば見つかります。これらの治療も重要です。その他頚動脈狭窄症の原因として、頚部の放射線治療や血管壁の異常(血管解離)などもあります。頚動脈狭窄症の症状は?
マヒ・ことばの障害などですが、多くは無症状に進行します。
頚動脈狭窄症は脳梗塞の原因で、突然の半身マヒ、ことばの障害、しびれ、視力・視野障害などを起こします。これらの症状がすぐに回復する、「一過性脳虚血発作」は脳梗塞の前兆です。
頚動脈狭窄症は脳梗塞を起こすまで全く無症状で徐々に進行します。特に狭心症、心筋梗塞、下肢血管疾患、脂質異常症、糖尿病がある方、喫煙される方は、無症候性(症状のない)頚動脈狭窄症が進行している可能性があります。
まずはどうすればよい?
禁煙と薬の服用です。
禁煙等の生活習慣の改善と薬による治療が基本です。血圧をコントロールし(140/90mmHg以下、可能なら130/80mmHg以下目安)、脂質異常を是正し(LDLを70mg/dL以下に)、糖尿病の方は厳密な血糖コントロール(HbA1c 7.0%以下に)が必要です。これらにより狭窄が改善することもしばしば見られます。
脳梗塞の予防には、抗血小板薬という血栓の形成を抑制する薬剤が有効で、アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなどがあります。病状によってこれらの薬剤を1剤または2剤服用していただくことがあります。
頚動脈狭窄症の血行再建治療
内科治療のみでは不十分なことがあります。
頚動脈狭窄症の治療の基本は先述した薬による内科治療ですが、以下の様な方は薬のみでは脳梗塞を予防できないことがあります。このような場合、血行再建治療を考慮します。
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作を起こした
- 高度な狭窄
- 無症状だがMRIで脳梗塞がある
- 狭窄が進行する
- 超音波検査やMRIで不安定なプラークが確認された
- 脳血流が低下している
血行再建治療の方法
手術と血管内治療があります。
- 頚動脈内膜はくり術
全身麻酔下に頚部を切開し、プラークを摘出します。脳梗塞急性期、多量の不安定なプラークの方に向きます。 - 頚動脈ステント治療
局所麻酔でカテーテルにより血管を拡張しステントという金属の筒を留置します。放射線治療後、全身麻酔の危険性が高い人に向きます。
筑波大学附属病院脳卒中科での
頚動脈狭窄症治療
頚動脈狭窄症の方は心臓の冠動脈疾患はじめ多くの併発疾患があり、他科との連携がとても重要です。筑波大学附属病院は、特定機能病院としてすべての診療科がそろい、高度な医療を提供しています。
頚動脈狭窄症の基本は内科治療ですが、狭窄が高度になると外科治療や血管内治療が必要になります。
当科では、内科医、外科医、血管内治療医すべてが診療科に在籍するので、ひとりひとりの患者様に最適な治療を滞りなく提供することができます。また血行再建治療には内幕剥離術とステント治療がありますが、どちらかに偏ることなく最適な方をお勧めし、患者様と相談しながら治療法を決定します。
頚動脈 内膜はくり術 |
頚動脈 ステント治療 |
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2019年 | 7 | 13 |
(文責:筑波大学附属病院脳卒中科 松丸 祐司)